【引用 :殉愛26P】
この日は妹の出産予定日でホテルの部屋で待機していたが、午後になってもその兆候はなく、夜に友人のイタリア人女性と食事をする予定を入れていた。
【引用 :殉愛34-36P】
翌二十八日の昼、たかじんにメールを入れた。
「今日もいいお天気ですね。妹はまだまだ気配がなく、生まれそうにないので、今日お会いできるのを楽しみにしています」
(中略)
ところがその直後、妹の様子がおかしくなった。どうやら破水したようだった。さくらはすぐにたかじんに「妹が破水したので、今から病院に行きます。今日は合えません」と慌ててメールした。
(中略)
病院に到着すると、すでに赤ちゃんは無事生まれていた。女の子だった。さくらは妹と彼女の夫に祝福の言葉を送り、記念写真を撮った。
病室が落ち着いたあと、その場からたかじんにメールを送った。
゜生まれたよーー。2850グラム、45センチの女の子。二人とも元気。祈ってくれてありがとう」
(中略)
さくらは赤ちゃんの名前が決まったことをたかじんにメールした。
【引用:殉愛 88P】
その夜、さくらは父に電話した。
「明後日、イタリアに帰るんやな」
(中略)
「お父さん」とさくらは言った。「実はイタリアには帰らないことにした」
「なんでや?」
「好きな人ができたから、暫く日本にいる」
「そんな人がいつ出来たんや?前から、付き合っていた人か?」
「違うの。去年の暮れに知り合ったの。家鋪さんという人なの」
「やしきではわからんがな」
「やしきたかじんと言うの」
「何や、たかじんかーー何っ、たかじん!」電話の向こうで、父は驚いた声を上げた。「あの、やしきたかじんか?」
「そう」
「お前、何を考えてるんや!頭がおかしくなったんか」
父は怒った。さくらは父の戸惑いと怒りは当然だと思った。
(中略)
次に兄に電話したが、兄からも「どうかしてるぞ」と言われた。妹には父から電話が入るだろうから、敢えて電話はしなかった。
【引用:殉愛 89P】
下宿先のママには、「しばらく帰ることができないので、さーちやんの面倒を見てほしい」とお願いした。ママは快く引き受けてくれた。
【引用:殉愛 110P】
三月二十日、さくらに父から電話があった。
父は会社の健康診断で初期の前立腺ガンが見つかったという。さくらはショックを受けた。
「お前は今、どこで何をしてるんや」
「たかじんさんの看病」
父は黙っていた。やしきたかじんが食道ガンで芸能活動を休養しているのはとっくに報道されている。
「お父さんの手術はいつ?」
「ゴールデンウィークあたりにしようと思ってる」
「決まったら教えて、お見舞いに行くから」
【引用:殉愛 131P】
手術中に、妹から電話がかかってきた。
「お父さんが二十三日から入院するの」妹は言った。「それで二十五日に手術することに決まった」
まさかこんなときに父の手術の話を聞かされるとは思わなかった。
「お姉ちゃん、帰ってこれる?」
「ごめん、今は無理。たかじんさんが大変なときなの」
事情を説明すると、妹は「仕方がないね」と言った。十二月に赤ちゃんを産んだばかりの彼女に父の世話を押し付けて申し訳ないと思ったが、今、東京から離れることはできない。
さくらはすぐに父に電話して、手術には立ち会えないことを伝えた。父はかんかんになって怒った。
「夫でもない男にそこまでするか、ちょっと顔を見せに来るくらいできるやろう」
(中略)
「親より大事というなら、好きにせい。もうお前なんか、娘と思わん」
父は怒鳴るように言うと、電話を切った。これ以降、さくらは父から勘当状態にされた。
【引用 :殉愛137P】
二歳上の兄が通学途中に部活の先輩たちにいじめられているのを見たさくらは、兄を助けたい一心で、近所に住むやくざの家に行き、「お兄ちゃんを助けてください」と頼んだ。見知らぬ女の子の切なる願いを聞いたそのやくざは、すぐに家を飛び出し、兄をいじめている先輩たちを一喝した。それ以後、兄へのいじめはなくなった。
【引用 :殉愛258P】
相原が口をはさんだ。
「結婚と言えば、師匠のほうが先にさくらちゃんとせなあきませんやん」
(中略)
たかじんは急に真面目な顔をした。
「さくらのお父さんにまだ挨拶していない。お嬢さんをくださいってきちんとお願いしてからもらう」
さくらはその言葉を嬉しく思ったが、自分は父親に勘当されているに等しい状態だ。はたして父とたかじんが会う日が来るのだろうか。
この日は妹の出産予定日でホテルの部屋で待機していたが、午後になってもその兆候はなく、夜に友人のイタリア人女性と食事をする予定を入れていた。
【引用 :殉愛34-36P】
翌二十八日の昼、たかじんにメールを入れた。
「今日もいいお天気ですね。妹はまだまだ気配がなく、生まれそうにないので、今日お会いできるのを楽しみにしています」
(中略)
ところがその直後、妹の様子がおかしくなった。どうやら破水したようだった。さくらはすぐにたかじんに「妹が破水したので、今から病院に行きます。今日は合えません」と慌ててメールした。
(中略)
病院に到着すると、すでに赤ちゃんは無事生まれていた。女の子だった。さくらは妹と彼女の夫に祝福の言葉を送り、記念写真を撮った。
病室が落ち着いたあと、その場からたかじんにメールを送った。
゜生まれたよーー。2850グラム、45センチの女の子。二人とも元気。祈ってくれてありがとう」
(中略)
さくらは赤ちゃんの名前が決まったことをたかじんにメールした。
【引用:殉愛 88P】
その夜、さくらは父に電話した。
「明後日、イタリアに帰るんやな」
(中略)
「お父さん」とさくらは言った。「実はイタリアには帰らないことにした」
「なんでや?」
「好きな人ができたから、暫く日本にいる」
「そんな人がいつ出来たんや?前から、付き合っていた人か?」
「違うの。去年の暮れに知り合ったの。家鋪さんという人なの」
「やしきではわからんがな」
「やしきたかじんと言うの」
「何や、たかじんかーー何っ、たかじん!」電話の向こうで、父は驚いた声を上げた。「あの、やしきたかじんか?」
「そう」
「お前、何を考えてるんや!頭がおかしくなったんか」
父は怒った。さくらは父の戸惑いと怒りは当然だと思った。
(中略)
次に兄に電話したが、兄からも「どうかしてるぞ」と言われた。妹には父から電話が入るだろうから、敢えて電話はしなかった。
【引用:殉愛 89P】
下宿先のママには、「しばらく帰ることができないので、さーちやんの面倒を見てほしい」とお願いした。ママは快く引き受けてくれた。
【引用:殉愛 110P】
三月二十日、さくらに父から電話があった。
父は会社の健康診断で初期の前立腺ガンが見つかったという。さくらはショックを受けた。
「お前は今、どこで何をしてるんや」
「たかじんさんの看病」
父は黙っていた。やしきたかじんが食道ガンで芸能活動を休養しているのはとっくに報道されている。
「お父さんの手術はいつ?」
「ゴールデンウィークあたりにしようと思ってる」
「決まったら教えて、お見舞いに行くから」
【引用:殉愛 131P】
手術中に、妹から電話がかかってきた。
「お父さんが二十三日から入院するの」妹は言った。「それで二十五日に手術することに決まった」
まさかこんなときに父の手術の話を聞かされるとは思わなかった。
「お姉ちゃん、帰ってこれる?」
「ごめん、今は無理。たかじんさんが大変なときなの」
事情を説明すると、妹は「仕方がないね」と言った。十二月に赤ちゃんを産んだばかりの彼女に父の世話を押し付けて申し訳ないと思ったが、今、東京から離れることはできない。
さくらはすぐに父に電話して、手術には立ち会えないことを伝えた。父はかんかんになって怒った。
「夫でもない男にそこまでするか、ちょっと顔を見せに来るくらいできるやろう」
(中略)
「親より大事というなら、好きにせい。もうお前なんか、娘と思わん」
父は怒鳴るように言うと、電話を切った。これ以降、さくらは父から勘当状態にされた。
【引用 :殉愛137P】
二歳上の兄が通学途中に部活の先輩たちにいじめられているのを見たさくらは、兄を助けたい一心で、近所に住むやくざの家に行き、「お兄ちゃんを助けてください」と頼んだ。見知らぬ女の子の切なる願いを聞いたそのやくざは、すぐに家を飛び出し、兄をいじめている先輩たちを一喝した。それ以後、兄へのいじめはなくなった。
【引用 :殉愛258P】
相原が口をはさんだ。
「結婚と言えば、師匠のほうが先にさくらちゃんとせなあきませんやん」
(中略)
たかじんは急に真面目な顔をした。
「さくらのお父さんにまだ挨拶していない。お嬢さんをくださいってきちんとお願いしてからもらう」
さくらはその言葉を嬉しく思ったが、自分は父親に勘当されているに等しい状態だ。はたして父とたかじんが会う日が来るのだろうか。