たかじんの遺言書については、寄付金以外の現金類と不動産の全てを、結婚して3ケ月足らずのさくらに相続させる、ただ一人の長女には一切の相続をさせないだけではなく、法的に認められた遺留分の請求もしないようにと念が押されたものだった。これには当の長女のみならず、赤の他人である人々にも驚愕の内容であった。
いかにして斯様な遺言書が残されたのか、他人様の懐事情ではあるが、遺産相続人となったさくら未亡人は、殉愛の中で何もいらない「無償の愛」を貫いたと書かれた人なので、至極興味深いところである。まずは、たかじんの遺言書作成にまつわる時系列を、これまでに発表された関連本や報道等を引用しながら整理してみたいと思う。

■2013年12月23日
【殉愛】
聖路加国際病院久保田医師より腹膜播種を診断され、余命1,2ケ月と宣告を受ける。

■2013年12月25日
【殉愛】
たかじんとさくらがエンディングノートを作成。さくらが書いたものをたかじんに読み聞かせた。
 ・たかじんがさくらには生活できるものを残すと言ったが、さくらは「いらない」と答えた。
 ・でも二人の貯金はさくらのものや。大阪のマンションはさくらに残す。退職金で清算できる。
 ・たかじんメモリアルを作る。
 ・たかじん名義の預金は全額寄付。寄付先は、大阪市、親がいない子供達の施設、盲導犬協会。
夜、たかじんが大阪から来たKマネと、一時間くらい打合せをした。たかじんが伝えた内容は、「余命のことを誰にも言うな」と、「俺が死んだら、さくらが全てをやるから、さくらの言う通りにしろ、さくらを助けろ」とのことだった。

【Wil掲載さくら手記】
エンディングノートには、遺言書と同様のことが書かれている。

【女性自身】
たかじんはマネージャーに、12月末には遺産配分に触れたエンディングノートの存在も明かし、長女についても金を渡すと明言していた。

【ゆめいらんかね やしきたかじん伝】
たかじんから呼ばれたKマネに「遺言書を書く必要がある。今度弁護士を呼んで来てくれ」と伝える。
 ・PIS閉鎖はKマネに任せる。
 ・年末に東京で事務所の弁護士と遺言状を作成する。

【殉愛の真実】
25日、K氏はたかじんと今後のことについて話し合った。2人の話し合いは3時間に及んだ。
 ・医者から余命2ヶ月を告げられた。
 ・弁護士立会いのもと、すみやかに遺言書をつくりたい。
 ・たかじんの死後は、弁護士や税理士と相談したうえで、事務所を閉鎖したいというK氏の要望を認める。
 ・余命の他言を制する言葉は無かった。
 ・さくらの言うとおりにしろ、さくらを助けろという言葉もなかった。
 ・たかじんはさくらのPIS介入を懸念するK氏に、「わかってる。あいつは金で黙らせる」と言った。


★殉愛の同じ項の中で、「二人の貯金はさくらのもの」と、「たかじん名義の預金は全額寄付」の相反する二つの表現がある。さらにさくらは「何もいらない」と言っていながら、出来上がった遺言書では総取りの形である。ノンフィクションと謳いながら不可解な表現を書く作者も作者だが、いい加減なエピソードを与えた方も与えた方である。
又、「二人の貯金」については、各金融機関の決まりを見ると、「個人の銀行口座は一人の名義でしか開設できません」となっている。さらに、「夫婦で共通の口座を持ちたい場合でも、夫もしくは妻の名義で新しく開設し、共通の口座とするしかありません」となっている。更に、「キャッシュカードはその名義人に対して一枚のみ発行されます。代理人カードを申し込むこともう一枚発行されるが、本人会員と生計をともにするご親族1名に限る」とされている。この決まりからすると、どれだけさくらに都合よく解釈しても、入籍後3ケ月間で貯めた分しか主張出来ないことになり、治療費や税負担を勘案すると大金とはならない。

■2013年12月26日
【殉愛】
たかじん、聖路加国際病院緩和ケア病棟へ緊急入院。

■2013年12月29日
【殉愛】
Kが弁護士を連れて来た。たかじんと弁護士の二人で打ち合わせをした。たかじんの意向で会話は録音されており、さくらに「明日、正式に遺言書を作る」と告げた。

【フラッシュ】
FLASHはこの録音が12月29日に行われたとしており、百田尚樹も同誌上で同様の証言をしている。

たかじん「もう寿命もあんまりないから(中略)法律である分配率は、絶対守らなあかんの?」
Y弁護士「いや、守らんでエエですよ」
たかじん「俺、娘にやりたくないんで、いいんですか?」
Y弁護士「いけますね」
たかじんの掠れた声が確かに聞き取れた。

【ゆめいらんかね やしきたかじん伝】
たかじんは年末の29日に弁護士立会いのもと、病室でビデオによる遺言状を作成した。

【殉愛の真実】
Y弁護士とKマネを呼び寄せ、遺産と遺言について自分の考えを伝えた。
Y弁護士に伝えた寄付先は、大阪市に3億円、あかるクラブに2億円、日本盲導犬協会大阪支部に1億円、親のいないこどもたちの施設・A学園に1億円。
 ※寄付金合計7億円。
さらにたかじんは、「遺言書に必要な実印と自分の現金は、大阪の自宅マンションの2つの金庫の中にある。おそらく(会わせて)3億円くらい入っているはずだ」と言い、「Kよ、お前が大阪まで行って金庫を見てきてくれんか」と、紙に金庫の暗証番号を書いてKに手渡した。
大阪のマンションでKが金庫を開けて退室。Y弁護士と別の弁護士がビデオカメラで録画しながら現金を数えた。現金は2つの金庫に合計2億8千万円入っていた。
たかじんが自宅マンションの金庫の中を確認してくれと言ったあと、さくらが弁護士と病院内で話し込んでいた光景をKは思い出した。事務所の運営や遺産のことで相談していたのかも知れないと思った。

【さくらの遺言執行者(Y弁護士)解任陳述書/要約】
主人の金庫と私の金庫の中のものを数えなおして、金庫内をビデオで撮影した。2つの金庫のうち1つは私のもの。私のお金と主人のお金は別にしていたのに、なぜ、勝手に一緒にしたのか。なぜ、了解なしにビデオを撮影したのか。

【Y弁護士の陳述】
さくら氏から、K氏に不信感を持っているので、自宅金庫を回扉した際は、きちんと現金を数えておいて、私(Y弁護士)がしたことをK氏にわかるようにしておいてほしいとの話があった。


★たかじんはこの日、Y弁護士とKマネに自分の意志を直接伝えている。ならば、25日にたかじんとKマネが話し合いをした内容を、Y弁護士に伝えたと考えていいだろうことを押さえておきたい。

■2013年12月30日
【殉愛】
 ・朝9時に目が覚めたたかじんは、「帰りたい」と言い出した。その後、久保田医師に麻薬を投与してもらい眠った。
 ・朝にたかじんと会話した久保田医師が「やしきたかじんの意識はしっかりしており、正常な判断力を持っている」と証明した
 ・午後3時半に弁護士三人がやってきた。今回は「危急時遺言」となるため二人の弁護士を立会人とした。 ・たかじんは会話はできるものの、文字を書けるような状態ではなかったため口述で作成された。
 ・筆記したのは、遺言執行者のY弁護士(PIS顧問弁護士)だった。
 ・遺言書作成の一部始終を録画・録音した。

【殉愛の真実】
Y弁護士が調べた結果、盲導犬協会に大阪支部がない、A学園についてはたかじん知人のМ氏が退任していた。説明を受けたたかじんはこの2件の寄付を止め、桃山学園に1億円の寄付をすることとなった。
 ※寄付金合計6億円。

【ライブドアニュース】
弁護士がこれらを●●さん(さくらさんのフルネーム)に遺すことを承知しますね? と聞かれたたかじんさんが、朦朧としながらただ『はぁい』と言っているのです。
とても弁護士の話の内容を理解しているようにはみえませんでした」
生前のたかじんさんを知る関西メディア関係者は、「余命いくばくかの病床の人に対してすることではないでしょ」と怒りを隠さない

【Will掲載さくら手記】
遺言書の作成に当たっては、娘さんの遺留分を遺産総額の半分ぐらい残しておくべき。なので、「そこは確保してください」と、私が遺言書作成の前日にきちんと伝え、「わかりました」との 回答を得ていたにもかかわらず、Y弁護士は、遺留分を 全く考慮せずに遺言を作成した。「娘には、遺言者の財産を相続させない」 との記述もあったが、いくら主人の希望とはいえ、弁護士としては書いてはいけないこと。

★この日作成された遺言書が、たかじんとKマネが打ち合わせた内容との大きな違いは、長女には遺産を一切残さずにさくらが全てを受け取ることと、PIS(たかじん個人事務所)の権利をさくらに渡すとされた2点である。前日の29日の打ち合わせにはKマネが同席しているが、この日はどの書物・報道でも病院へ出向いた記述がないので、病院へは行っていないと思われる。当然、遺言書作成時に同席できる立場にないが、PISの顧問弁護士であるY弁護士を信用していたのだろう。
この間隙と、29日のたかじんとの打ち合わせ後、Y弁護士がさくらと病院内で話し込んでいたことが意味深い。

★たかじん関連の書籍・報道では29日にビデオ撮影が行われたとするもの、29日は録音のみで30日にビデオ撮影が行われたとするものが混在している。
フラッシュが報じた、たかじんとY弁護士の会話の録音、「娘にやりたくない」「いけますね」は29日のものとされている。作家タブーの項でも書いたが、このフラッシュ記事は百田尚樹のゴリ押しで掲載されたものである。普通に考えると30日のビデオ撮影に基づいて記事にした方が、より説得力があるものになったと思うが、なぜ、29日の録音したテープを根拠に記事にしたのだろうか。さくらも百田尚樹も、そうするのには理由があるのではないのか。たかじんの「娘にやりたくない」の言葉を、29日に欲しかった点に謎があるのではないかと考えている。

■2013年12月31日
【フライデー】
Y弁護士が1.000万円(29日、さくらが当面の生活費として、大阪の金庫から持ってくるよう指示した)の受領サインを求めたことに立腹したさくらがたかじんに話すと、最後の力を振り絞って、メモに「現金さくら」と書いた。


■2014年1月5日 (たかじん直葬の日)
【殉愛の真実】
長女が遺言書内容をY弁護士から口頭で教えてもらう。
Y弁護士が長女に遺留分の主張をしてくれるなと告げる。理由は寄付が出来なくなるから。
Y弁護士が長女に、いくらかは娘さんにも渡るように、奥さん(さくら)に話して見ます。金額は1億円、と告げる。

【殉愛】
Y弁護士がさくらに電話、娘が「娘に一切相続させない」と知って、カンカンになって怒っていると知らせる

【Y弁護士の陳述書】
私(Y弁護士)と娘さんとのやりとりをさくら氏に伝えた。
さくらがY弁護士に、「長女への遺産相続を1億円で納得させてほしい」と持ちかける。もともと盲導犬協会に寄付するとした1億円がなくなった(たかじん判断で取消)ので、それを渡すと考えれば納得できる。

【Will掲載さくら手記】
Y弁護士は、ほかにも娘さんに「一億円で手を打たないか」と持ちかけるなどの問題を起こしている。
問題行動と、娘さんの遺留分の権利を守らねばと、Y弁護士の遺言執行者解任を大阪家裁に申し立て、結果的にY弁護士は辞任した。裁判費用は私が全額負担した。
娘さんは、私がY弁護士に「一億で手を打たないか」と言わせたと主張している。
 ※長女の遺留分は、遺言書内容にかかわらず、全遺産の4分の1の権利がある

★12月30日に作成したのは危急時遺言書なので、検認を受けるため裁判所へ提出するが、2014年1月5日は曜日の関係でその前である。本来は検認後に相続関係者が裁判所に呼ばれ、その前で明らかにされるのが決まりである。Y弁護士1月5日、口頭で長女に相続分はないと伝えているが、さくらが盲導犬協会への寄付が無くなった事実を知っていることから、さくらには速やかに全容を明かしていたことになる(他のエピソードもある)。

★長女の遺留分の放棄は、たかじんの遺言書に希望として書かれていたが、遺留分請求は法的に認められた権利である。「遺留分請求によって寄付が出来なくなる」「盲導犬協会への寄付が消滅した分の1億円で納得してほしい」等、さくらの言い分を受け売りした感が否めないY弁護士の言動である。
特にY弁護士は税理士資格も持っており、足算引算が苦手な訳でもあるまいに、「寄付が出来なくなる」の文言はいただけない。さくら側の何らかの事情を汲み取ったのではないかと思うが、それは不動産処分に絡むものではないだろうか。

★今更感が否めないさくらの弁であるが、Will誌に手記を寄せた期日は、OSAKAあかるクラブ、桃山学園への寄付が決定事項となった後、又、長女の遺留分請求意志が固まった後と思われる。寄付金奪還作戦や遺留分放棄工作が失敗した後なので、観念したという意味なのだろう。実は最初からこう思っていましたと言われても、空々しいとしか思えない。

■2014年1月19日
【殉愛の真実】
たかじん長女がY弁護士と羽田空港で会い、「遺言書」を書き写す。
この際にY弁護士は長女に「遺留分を主張しないでほしい、遺言書どおりに寄付が実行出来るかはあなたにかかっています」と話す。

■2014年・・月・・日
たかじん遺言書は有効であると審判された。
【大阪家裁事件番号平成26年(家)第34号遺言確認申立事件】
遺言者が平成25年12月30日にした遺言(別紙遺言書の記載内容)は真意に基づくものと認められるのであり、その方式に明白な不備がないことなども考慮すると、遺言者が別紙遺言書記載の遺言をしたことを確認するのが相当であるから、主文の通り審判する。
「主文 1 遺言者が平成25年12月30日別紙遺言書記載の遺言をしたことを確認する」

■2014年2月25日  
【大阪家裁事件番号平成26年(家)第391号遺言書検認申立事件】
遺言書検認される。


■2014年3月10日
【週刊新潮
やしきたかじんの遺言執行者だったY弁護士が数々の問題を起こしたと家鋪さくら氏が主張し、2014年3月10日に大阪家庭裁判所にY弁護士の解任を申し立てた。
 ※その後、Y弁護士が自主的に退任。

■2014年秋
【殉愛の真実】
大阪地裁選任遺言執行者(弁護士)により、遺産目録作成。
遺産総額8億6千万円。金庫内現金2億8千万円のうち、1億8千万円はさくらのものとされた。

■2014年12月24日
OSAKAあかるクラブへ2億円、桃山学園へ1億円の遺贈が、遺言執行人より実行された。

★たかじんの総遺産は8億6千万円とされたが、さくらが自分のものとした金庫の1億8千万円を含めると、10億4千万円がたかじんが芸能人生活で残した金額となる。

★長女代理人は遺留分請求前に、遺産総額確認申し出を行うと話しているので、8億6千万円とされている遺産総額の増額があるかも知れない。さくらが自分のものとした1億8千万円の正当性が問われることになり、さらには死去3年前に遡ったプレゼント品の遺産繰り入れ(※但し、遺留分減殺請求出来るのは1年前までの遡り分とする条項有)、たかじん死後の共同財産とみなされた場合の収入、有ると仮定したなら隠された財産等も対象となる。