★先行したネット民

2014年11月の「殉愛」発売以来、ネット民を中心に疑問点が論じられ、ついには結婚の事実と併せて重婚疑惑騒動が持ち上がる中、雑誌、新聞、テレビ等の大手メディアが一切取り上げない状況が続き、たかじんファンを中心としてフラストレーションが高まる一方であった。
ノンフィクションと謳われた「殉愛」に対して生じる不可解なストーリー、批判はアマゾンレビューにも向かう事になった。更にはたかじん長女が、発行元の幻冬舎に対して「出版差止めと1100万円の損害賠償を求める」訴訟を起こす。しかし取り上げる大手マスコミは皆無であった。これは異常事態である。

大手マスコミがだんまりなのを背景に、作者の百田尚樹が吠えまくり、お得意の「人間のクズ」フレーズを使いながら恫喝する。



まず声を上げたのは作詞家の及川眠子氏である。彼女はたかじんへ約70曲の詞を提供し、他にも多くのヒット曲を手掛けている人物である。


★林真理子「誰が朝日新聞のことを叩けるのであろうか」

普段は重箱の隅をつつくのが役割のようかな週刊誌も、「殉愛」発売から約一ヶ月経過しても音無しの構えだ。
著者の百田尚樹は時の大ベストセラー作家、版元は安倍総理との親密な交友関係にある見城徹氏率いる幻冬舎。何かの力が働いていることは想像出来たが、ここに切り込んだのは文壇の大御所・林真理子氏だ。

彼女は連載中の「週刊文春・12月11月号・コラム 夜ふけのなわとび」で、「殉愛」問題に触れないメディアに苦言を呈したのだ、当の「週刊文春」も含めて彼女の「尻たたき」をまとめてみよう。

・ものすごい不気味さを感じるのである。この言論統制は何なんだ!

・大手の芸能事務所に言われたとおりのことしかしない、テレビのワイドショーなんかとっくに見限っている。けれど週刊誌の使命は、こうしたものをきちんと報道することでしょう

・意地悪が売りものの週刊新潮もワイドの記事にすらしない。週刊文春も一行も書かない。

・やしきたかじんの新妻は遺産めあて、と最初に書きたてたのは週刊誌ではなかったか

・あと講談社が版元の週刊現代は言わずもがなである。週刊ポストも知らん顔。こういうネタが大好きな女性週刊誌もなぜか全く無視。大きな力が働いているのかと思う異様さだ

・もうジャーナリズムなんて名乗らない方がいい。自分のところに都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるのであろうか

林真理子文春












★ズバリ、大手出版社事情

いまやメディアにとってのタブーは天皇でも創価学会でも電通でもない。作家なのである昔、『噂の真相』という雑誌が出ていたときは、毎号作家についてのスキャンダルや批判が載っていたが、いまや作家について、それもベストセラー作家のスキャンダルなど読みたくてもどこを探しても見つからない。
『週刊現代』を出している講談社は「海賊とよばれた男」が大ベストセラーになっている。『週刊新潮』は百田の連載が終わったばかり。タブーは他誌に比べてないはずの『週刊文春』だが、林によると「近いうちに連載が始まるらしい」から、これまた書かない。小学館の『週刊ポスト』も百田の連載をアテにしているのかもしれない。
(J-CASTニュース)

"やしきたかじん『殉愛』騒動、大手出版社が百田尚樹&さくら夫人擁護インタビュー連発の兆し"
「この件に関してはテレビ各局も『どこかが先陣を切って報じてくれれば』と、一番乗りでの報道は遠慮している状態です。しかし、頼みの綱となる紙メディアに関しても、雑誌よりも書籍が上位という出版社のルールにより、売れっ子作家・百田の機嫌を損ねてはならないと、どこも手が出せない。そして次号以降の『フライデー』(講談社)には、なんとさくら夫人の『独占インタビュー』が掲載予定だそうです」(出版業界関係者)

(サイゾーウーマン)

★「殉愛」問題に対する出版各社対応


▼週刊文春はたかじん死後は未亡人批判の急先鋒であり、「マカロン発言」スクープも同誌であった。この件は殉愛で真っ赤なウソと断定されているが、一切の反論をしていない。これには事情がある。

【引用 :宝島2月号】
「文春」では年末の新年合併号から百田さんの連載小説が始まり・・・(中略)
出版不況の昨今、各出版社に対する人気作家の影響力は絶大で、各社とも自社の週刊誌がこのスキャンダルを報じて、百田さんの逆鱗に触れ、連載を止められたり、版権を引き上げられることを恐れ、"自主規制"しているのです。


前述の林真理子氏の「尻たたき」効果なのか、翌週の週刊文春で殉愛問題を取り上げることになったが、内容は「林真理子さんの疑問にお答えします」と題された、本題とはかけ離れたものだった。「たかじん最期の2年間を、誰よりも献身的に支えたのは彼女だ」と、殉愛を肯定するだけのもので、読者の失笑を買った。

▼週刊新潮は親誌の新潮で、百田尚樹著作のフォルトゥナの瞳の連載が終わり、単行本が発売されたばかりであった。文春と同じ12月18日号でこの問題を取り上げたが、百田尚樹とさくらの主張に丸乗りした内容だ。

【引用 :宝島2月号】
"重婚疑惑"については、もう一方の当事者であるイタリア人を取材することもなく、さくらから提供された離婚届の「受理証明書」だけを根拠に、「重婚」の事実は全くなかったと断定し、メモの"捏造疑惑"も、自ら検証することもなく、ネット情報をそのまま拝借。それでいてネットを騒がせている「重婚疑惑」と「メモ捏造疑惑」はいずれも事実ではなかったわけだ、などと勝手に納得しているのだから噴飯モノだ。


メモ偽造疑惑については、情報探偵サイト「探偵ファイル」が依頼した筆跡鑑定の結果をなぞっただけのもので、メディア側の検証がなされていないものだった。

▼FRAIDAYは講談社が発行する写真誌であり、講談社と百田尚樹の繋がりは深い。「海賊と呼ばれた男」「永遠の0」をはじめとする文庫本を発行している。
12月26日号てはさくらから提供された2ショット画像をふんだんに使い、8ページに渡る特集を組んだ。さくらから提供された「たかじん遺言書」の写真を掲載し、さくらの遺産相続の正当性を主張する片棒を担いだ形となった。

▼これでも百田大作家は不服だったようだ。週刊新潮とフラッシュに対し、ツイッターで不満をぶちまけることになった。


謎解きと週刊新潮の狼狽え振りは「宝島3月号」で明かされるが、まずは次の引用を掲載する。

「文春や現代、ポストの週刊誌編集部には関西生まれの記者や編集者も多く、彼らは子供の頃からたかじんの番組に慣れ親しみ、親近感を持っており、今の状況は許せないと思っている。若手記者たちは『企画を出しても通らない!』と憤っています。中には仕方なく自腹で取材に動いたり、情報収集をしはじめる記者もいます。ある版元の、ノンフィクションが得意の敏腕編集者の下には、こうした情報が続々と集まっていると聞きました。騒動の裏側が本格的に暴かれる日も近いのでは」(夕刊紙記者)
(J-CASTニュース)

新潮社と百田尚樹の関係と、掲載記事については前述したが、その記事掲載について「ひと悶着」があったとのことだ。そもそも週刊新潮12月18日号の記事は、11月中旬に百田尚樹から編集部に持ち込まれ、ゴリ押しで掲載されたものだったという。

【引用 :宝島3月号】
「週刊新潮」編集部に百田から、「ネットで騒がれているさくら夫人の重婚疑惑や筆跡鑑定について反論したい」と反論インタビューの依頼があったのは昨年11月半ばだったという。
「すでにネットでは、さくら夫人のブログや過去写真など数々の証拠物とともに、多くの疑惑が流布していた時期
でしたし、編集部としては触らぬ神に祟りなし。"殉愛騒動"などには一切触らず、やり過ごすという雰囲気だった」(出版関係者)
そんなところに振って湧いた百田本人からの取材依頼である。編集部としても自社から作品を出版する売っこ作家・百田の依頼を断わるわけにはいかない。

当初は百田の単独インタビューの要求だったが、一方的な主張を掲載すると大きな批判が来る。検証的な記事でさくら夫人を登場させることで説得したが、結果は百田とさくらの意に沿っただけの記事であった。下記に「宝島」3月号掲載記事を要約する。

・百田自身の単独インタビューを諦め、さくら単独独白記事を要求、週刊新潮は受け入れた。
・さくらのインタビューは5時間に及んだが、使えない内容だった。
・さくらの証言は二転三転した。
(※例/イタリアブログは家族を安心させるため→友達が、妹が勝手に更新した、インタビューで話さないこと→ネットで次々暴かれる)
・菅原文太死去で記事差替え、原稿ボツの可能性出る。
・察知した百田が、新潮社幹部、週刊新潮編集長などに掲載を強く要請。
・さくらに対してネットでの事実を再取材するが、話自体がよく分らない。
(※結婚歴、帰化、改名等)
・さすがに編集部も躊躇、たかじん長女などの周辺取材を行い、検証記事の体裁を整えた。

しかし、校了寸前になって、さくらは記事内容の変更を申し出る。

・自分のものと主張した、金庫内現金1億8千万円の根拠について、証言が変遷した。
(※業務委託契約、難聴・乳腺炎慰謝料、リボンにくるんだお金、300万円、等々)

【引用 :宝島3月号】
こうして百田とさくら夫人が思い描いていたであろう「ストーリー」がどんどん変遷していく。もちろんその原因はさくら夫人の発言にあるのだが、その揚句、当初は予定されていなかった長女のコメントまで掲載された百田が、ツイッターで怒りを表明したということらしい。

月刊宝島へ告発した週刊新潮記者には同情する点もあるが、取材で知り得た情報を改ざんして掲載し、社幹部も含めて「作家タブー」に振り回されたのは事実である。前述した「週刊文春」共々、二大週刊誌が百田尚樹にひれ伏す体たらくぶりは、まさしく「誰が朝日新聞のことを叩けるのであろうか」と言える。
私もこの両誌は読むことが多かったが、失望した今は手に取ることはない。

▼「殉愛」問題に批判的な出版物

「月刊宝島」「週刊朝日」「週刊SPA」「サンデー毎日」「女性自身」「婦人公論」「百田尚樹・殉愛の真実」(宝島社) 等には作家タブーが及ばなかった。
長女の手記を掲載した婦人公論、殉愛の検証本を発刊した宝島社、複数号に渡って事実究明にあたった週刊朝日、サンデー毎日、女性自身等への賞賛の声は高い。


百田尚樹は虚勢して見せたが、デタラメなのは「殉愛」とそれを擁護した各出版社の方だった。
林真理子氏曰く「見限っている」テレビのワイドショーは、たかじんと旧知、或いは恩義を有する者を含めて、一切触れていない。下界の者には理解し難い世界のようである。